それでも虹は美しい

「理由を知っていても,その美しさは変わらない」

工程が大事なのだけはわかった。

 この三年でだし巻き卵を作るのが上手になった。レシピ通りに作れば味に関してはおいしくできるけれど、技術はなかなか習得することが難しい。初めはうまく巻くこと難しかったが、水分を加えることと少し強めの中火を保つことを心掛けると、ちょうどいい具合に卵液が半熟になり巻きやすくなることがわかった。

 それにしても、論文の書き方はわからないままだった。これからもわからないままだとするとゾッとする。このまま続けるべきなのか、ここいらで見切りをつけるべきなのだろうか。論文を読んで、計画を立て、実験をして、結果を出す。そして論文に仕上げる。結果が出るまで何度も条件を変えてやり直すことが出来る人が、この生活に向いているのだと思う。

 だし巻き卵の作り方と論文の書き方はもちろん違うのだけれど、条件を変えて何度も試行錯誤を繰り返すという点では同じはずなのだ。ただ結果に関係する要因の数が異なるだけだ。ということは、論文を読んでいる段階でうまく要因を抜け出せば、その後の工程が楽になるのだろう。または、実験の技術が要因が複雑でもうまく安定した結果を出せるのかもしれない。

 

 お話としてはわかっているのだけれど、実際にやってみるとうまくいかない。しばらくはこのままお休みを続けようと思う。どうするにせよ、未来はまだ僕の手の中にある。