それでも虹は美しい

「理由を知っていても,その美しさは変わらない」

カラスと暮らす。

 幸いにもそして愚かにも「いつか」に対して重さを感じることのなく簡単に口から出たそれは、僕の予測していた以上にみじかい消費期限を持っていた。言葉の寂しさは別の言葉を連れてくる。あたらしさ。サヨナラ昔の世界。連絡は早めに送れ。もうチャンスは少ない。カラスを連れて行こう。

 僕も,僕が連れてきたカラスも無口になって見つめている。彼女は僕に言うだろう「いつかはもう過ぎた。」と。幸福な日常は終わりでこれからはカラスと慎ましやかに生きていく。いつかが来たこととサヨナラを言えたことは同程度に幸いだった。サヨナラを心から言えたのか、またねと言ってしまった気がする。 カラスは僕とついてきてくれる。なぜならここのところ彼とは仲良くしていたから。

 

 新しい店に行くとカラスが懐いているなら雇ってやるという。簡単なテストを解きカラスとの関係を証明した。カラスは僕に懐いているように見える。茶番だ。関係性など本人にもわからない。俺はカラスが好きだ。カラスは?