それでも虹は美しい

「理由を知っていても,その美しさは変わらない」

工程が大事なのだけはわかった。

 この三年でだし巻き卵を作るのが上手になった。レシピ通りに作れば味に関してはおいしくできるけれど、技術はなかなか習得することが難しい。初めはうまく巻くこと難しかったが、水分を加えることと少し強めの中火を保つことを心掛けると、ちょうどいい具合に卵液が半熟になり巻きやすくなることがわかった。

 それにしても、論文の書き方はわからないままだった。これからもわからないままだとするとゾッとする。このまま続けるべきなのか、ここいらで見切りをつけるべきなのだろうか。論文を読んで、計画を立て、実験をして、結果を出す。そして論文に仕上げる。結果が出るまで何度も条件を変えてやり直すことが出来る人が、この生活に向いているのだと思う。

 だし巻き卵の作り方と論文の書き方はもちろん違うのだけれど、条件を変えて何度も試行錯誤を繰り返すという点では同じはずなのだ。ただ結果に関係する要因の数が異なるだけだ。ということは、論文を読んでいる段階でうまく要因を抜け出せば、その後の工程が楽になるのだろう。または、実験の技術が要因が複雑でもうまく安定した結果を出せるのかもしれない。

 

 お話としてはわかっているのだけれど、実際にやってみるとうまくいかない。しばらくはこのままお休みを続けようと思う。どうするにせよ、未来はまだ僕の手の中にある。

 

20170227の日記

何気なく入った手芸屋で毛糸の玉を見た。毛糸の赤は溶けてぼんやりしていて、ラベルだけがやけにリアルだった。

僕の友人は就職を済ませ、部下を持つような立場になりはじめている。頼みの綱だった高校時代からの友人も昨年DJ一本に絞ることをやめ、就職したそうだ。
僕だけがまだ何にもなりきれず、そのくせ大学院生というラベルを剥がすことを恐れている。何者でもないことも、何かになることも両方が怖いのか。毛糸の玉のままでは何の役にも立たない。
猫が遊んでくれればいいのに。

『Boy's Surface』 円城塔 / 僕と彼女の間にあった「屈折」について

 具体的な経験があることと,それを描いた文学作品を理解できることは別だ。恋愛をしてみてわかった事は,「恋愛をしたからといって恋愛小説の読解力が変わるわけではない」という事だ。逆に恋愛をしていても読み方を知らないと「Boy's Surface」を理解できないだろう。これが文学だろ?

 

本文中にあらすじを書くが,それを読み取るのがおもしろい話でもあるので読んでから見たほうが面白いと思う。と言っても2007年の短編を2016年に話しているわけで,ネタバレと言われても困るけれど。

 

 まだ関西にいたとき,友人から「恋愛小説を研究しているのに恋愛をしたことが無い人がいる」という笑い話を聞かされた。僕はその時に笑うことができなかったが,否定することもできなかった。「経験」から得られるものについて否定するだけの根拠を持っていない気がしたから。

 ところで,昨年7月から今年の1月にかけて初めて恋人として付き合うという経験をした。(個人的なことだけど,はてなブログの片隅に名前が出ない形で書く分には発見されることも無いだろう。他のSNSと紐付けないように気をつけよう。)自分が好意を向けた相手から好意が返ってくるのは初めてで,とてもいいものだと思った。

 それだけに,向こうから別れの意向を告げられたときには悲しかった。今まで見ていた相手のイメージは僕の頭の中だけで作られていたんじゃないかと疑った。そもそも,人の脳の状態をまるまるそのまま理解できない以上,行動を見て推測したものを僕たちは「こころ」と読んでいるわけで,相手のイメージは作り上げられたものだというのは当然のことなのだけれど。

 

 このあと,おおまかなあらすじを書く。できれば読んでからにして欲しい。更にできれば下の画像からリンクで飛べるアマゾンで買ってほしい。

 

 

 

 

 この円城塔の短編であるBoy's Surfaceでは,数学者レフラーと認知科学者フランシーヌが出会い,別れる。二人の間に数学的な構造である「レフラー球」があることをレフラーは発見する。レフラー球は,情報を反対側に伝える際に,意味を変容させてしまう。人と人との間には「レフラー球」が存在していて,どうしても完璧にお互いを理解することはできない。

 それでも相手を理解しようとする試みが恋であり,その試みこそが美しいのだというそんな話だった。

 この話を昨年6月の僕は理解していて,面白い話だと思ったし,読み直すまで面白いと思っていた。それは,人と人との理解の不可能さを数学的な構造である「レフラー球」を使って表すという文学的なテーマに対するSF的アプローチがかっこよかったからだ。ここが文学的な能力が必要なところだ。

 いまこの話を読むと,自分の経験と照らし合わせてしまい感傷的になりすぎる。3月4日時点の僕は,あの恋愛に対して未練たらたらだからだ。これでは,ノイズが多すぎて元の意図から読み取った内容がズレてしまうだろう。エモは危険だ。

 しかし,それでも問題はない。なぜなら文中にあるようにBoy's Surfaceは「二次元基盤レフラー図形」によって書かれた文章であるからだ。円城塔からの恋文。入れ子構造の見事さ。

 

 あの子の嫌いなところは見つからないと思ってたけど,こういう文学的なセンスが無いところはあまり好きじゃなかったな。500日目も近いのかもしれない。

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『ひきだしにテラリウム』九井諒子

『ひきだしにテラリウム』は九井諒子の短編集商業誌3作目で、主にマトログロッソで連載されていた4ページほどの短編が集められている。星新一っぽいって思うんじゃないかな。

余談だけど、マトログロッソはWeb文芸誌で、面白い文章と漫画が無料で読めるのですごい。現代ばんざい!メレ山メレ子の『ときめき昆虫学』が面白かった。もう連載は終わったみたいだけど。本になったらしい。わーい!

 

 

テラリウムっていうのはガラスなどの透明な容器の中で植物や生き物を育てるものです。なかなか手間がかかるみたいだけど,1つの世界がガラスの中で完成しているのってカッコイイ。

 

この短編集もそれぞれは2ページぐらいのほんとに短い話が集めてあるんだけど,それぞれの話の後ろにある世界が感じられるように話が作られてて面白い。九井諒子は世界の設定を作るのが本当に上手いと思う。すごい。ダンジョン飯も2巻まで読んだけど,どんどん話の奥行きが出てきて面白いし。あと余談ですが,webにあげてた「西には竜がいる」ってファンタジーかつスパイ物のお話も面白かった(タイトル名はうろ覚えです)。ぜひ完結させて欲しいです!

 

この短編集だと「えぐちみ代このスットコ訪問記 トーワ国編」でトーワ国が出てきて,「作者の中にまだあの世界はあるんだ!!」と思ってすごくテンションが上りました。舞台は現代になってるからweb漫画のトーワ国とは世界観は変わってるけど,特徴とかは残っててあの国が歴史をたどるとこうなってそうって思う。作りこみがすごいぜ!すごいぜ,九井諒子

あと絵柄をたくさん持っててお話ごとに使い分けるのもかっこいい。ホントに絵が上手い人なんだろうなー。

 

漫画好きな人は読んでみてほしいな!

現代は羽海野チカ九井諒子がいるから最高!!生きててよかったね!!

kakato "Japanese in thai" / 肩の力を抜いてる風

KAKATOは聴きやすいよ!イカツイの苦手な人にもオススメ。2013年に出してるフリーダウンロードアルバムが"Japanese in thai"です。ネット探したらどっかに落ちてるかもね。

 

フリースタイルダンジョンのおかげでHIPHOP熱が再び出てきました。自分の中で。フリースタイルでやってるラップの内容は、ラップバトルということもあり、いかつい内容が多いと思います(ゴメスとサイプレス上野はそんなことなかったけど。あの試合好きでした。)。

環ROY鎮座DOPENESSはどちらもバトルで有名になったMCなんですが、音源での言葉の選び方が優しいので聴きやすいと思う。それでいてはなす内容はぼやけてない気がする。僕はMSCみたいにサグい日常を送ってないので、自分の日常と近いから聴きやすいというのもあるかも。

ユザーンとも一緒にやってるよ。

youtu.be

フリースタイルダンジョンは面白いよね!

フリースタイルダンジョン面白いですよね。モンスターがどんどん上手になってるのがいいですよね。

MC漢を応援してます。本当に。

 

 

MCバトルの大きい大会でUMBというのがあります。その大会の制度を整えた一人が漢です。

もともと歴史としてはB-boyパークでやってたMCバトルが成り立たなくなって(ここも動画に残ってますよ)、漢たちが新しくMCバトルの大会を作りそれがUMBです。

そのUMBの運営をどこがしてるのかに注目すると面白いですよ。演歌の時から脈々と続く音楽業界の笑えない話が出てきます。N.W.Aの映画に近い。シュグ・ナイトは日本にもいた。

 

漢がもともと所属していたLibraというレコード会社があります。漢がUMBを運営していたのはもともとこの会社で、シンゴ西成とか有名なラッパーも所属してました。問題はLibraがアーティストにCDの売上を渡していないという問題が出てきていることです。さらに、従業員に対する暴力と給料未払いに対する裁判を起こされています。

それをやっているのが漢です。詳しくはAmebreakの記事を読むといいと思います。Libraの社長がブラックすぎる。まじシュグ・ナイトだ。

漢はダースレイダーとともに新しく鎖グループとブラック・スワンというレーベルを立ち上げました。応援してる。

『鎖グループ & BLACK SWAN』共同記者会見を振り返る(追記あり)|COLUMN[コラム]|Amebreak[アメブレイク]

 

このことが起きた後、LibraがやってるUMBの司会を晋平太がやっている。フリースタイルダンジョンで審査員として晋平太が出て、モンスターとして漢が出ているのがどうなのかって話題になってました。

 

実際どういうことになってるのかっていうのを漢の口からとうとう。


Live streaming by Ustreamwww.ustream.tv

その後、そのLibraレコードに晋平太が入社していることがわかってしまった。それがこのUstreamです。漢悲しそうだ。

 

別の話だけど、漢とダースレイダーの絡みは楽しいな。第三会議室の二人とはちょっと違うけどおなじ仲良し感がある。

 

晋平太はちゃんと偏りのないジャッジはしてて偉いと思うけど、ライブラに入ったのは正しくはないと思うんだよなー。